沖縄には、「口難口事(くちなん・くちごと)」という言葉があります。これは、他人からの悪口や陰口(恨みや妬みなど)、根拠のない噂話が原因で降りかかる災厄のことを指します。沖縄の文化では「言葉には魂が宿る」と考えられており、良くも悪くも人の運命を左右すると信じられています。
「口難」に遭うと、次のような悪影響があるとされています。
- 運気の低下:仕事や恋愛がうまくいかなくなる。
- 体調不良:原因不明の不調や、疲れが取れない状態になる。
- 対人関係のトラブル:人間関係のいざこざが増え、孤立することがある。
- 不運が続く:計画通りに物事が進まず、次々と問題が起こる。
こうした「口難」の影響を断ち切るために、沖縄には「口難外し(くちなんはずし)」という伝統的なおまじないがあります。
口難外し やり方

沖縄の「口難外し」は、特定の儀式を行うことで言葉による災いを取り除くものです。その際、道具と呪文を唱えます。
① 準備する
まず、トイレを掃除します。掃除する際は、塩水を作り、それを雑巾に浸して拭き掃除します。掃除は便器だけじゃなく、床や壁なども含みます。トイレ内全体を清めるイメージで行います。
② 供え物を用意する
お米、塩、お酒を小盆にのせて用意します。お米と塩は小皿または盃で、お酒はトックリなどがあればいいですが、コップでもOKです。用意できたら、トイレの前に置きます。
③ 口難外しをする時間
口難外しをする時間帯は、アコークロー(夕暮れ時)に行います。
④ グイスを唱える
アコークロー(夕暮れ時)の時間になり、供物を用意できたら、トイレの前で正座します。そして、以下のグイス(拝み言葉:祝詞)を唱えます。
手順1:グイスを唱える
「さり、あーとーとぅ、うーとーとぅ。
まさしぇーる(何にも増して優れた)フールの神様(トイレの神様)。私は(住む地域)に住む(干支)年生まれの(氏名)です。
私に口難口事(くちなんくちぐぅとぅ)が入ってきています。
私に対する悪い気持ち、悪口、妬みは、このフールから流してください。
今、私にかかっているヤナ口は、受けることができません。ヤナ口は、出した人の口に返し、善い口に戻してあげて下さい。
私も、善い心で相手を迎えますので、これからは相手も善い心を持ちますように。
さり、あーとーとぅ、うーとーとぅ。」
手順2:「うびなでぃ」をする
グイスを言い終わったら、塩を頭のつむじにすり込みます。それから、お酒で「うびなでぃ」を行います。「うびなでぃ」とは、中指で額に3回撫でまわす行為です。口難外しの場合、お酒をトントントンと額にあてるようにして撫でます。
手順3:トイレを流す
次に、お米、塩、お酒を半分ずつ、左手で便器の中に入れて流します。流すとき、「口難を受け取ることはできません、出した人に返す!」と強い口調で言います。
(※)ここで全て(お米、塩、お酒)を流してもOKです。家が賃貸の場合はそのようにしてください。
手順4:玄関で放つ
残りのお米、塩、お酒を玄関で放ちます。その際、「口難を受け取ることはできません、出した人に返す!」と強い口調を言い放ってください。
なお、ここでの手順では、誰にも見られないということが前提です。なので、誰にも見られずに、手順4は済ませてください。
手順5:外出を控える
口難外しが終わったら、その日の外出は避けてください。
まとめ
以上が、口難外しのやり方です。
沖縄では、悪口や噂話が原因で降りかかる災難があると信じられています。その影響を避けるために、古くから「口難外し」というおまじないが伝わってきました。
現代でも、人間関係のトラブルや噂話に悩まされることは多いもの。そんな時は、沖縄の伝統的なおまじない「口難外し」を試して、心をスッキリさせてみてはいかがでしょうか?