沖縄には、家と土地を守るために行われる「屋敷願い(ヤシチヌウグァン)」という伝統的な祈願があります。地域によって時期や回数は異なりますが、多くの家庭で今も大切に受け継がれている風習です。
特に旧暦12月24日は、屋敷の神々と人々をつなぐ存在であるヒヌカン(火の神)が天へ帰る日とされており、この日に一年間の感謝を伝える屋敷願いを行うことが一般的です。今回は、屋敷願いの流れや準備すべきものについて詳しく解説します。
屋敷願いの基本~六つの神様を巡る~

屋敷願いでは、家を守る神々に感謝を捧げ、家の安全と繁栄を願います。地域によって異なりますが、沖縄で一般的な屋敷願いの順番は以下の通りです。
【屋敷願いで巡る六つの神様】
- ヒヌカン(火の神)…台所
- お仏壇(※地域によって含まない場合もあり)
- ユンシヌカミ(四隅の神) … 家の東西南北の四隅
- ジョウヌカミ(門の神) … 門
- フールヌカミ(トイレの神) … トイレ
- ナカジンヌカミ(中陣の神) … 玄関と門の間
昔の沖縄の家は庭と門がある平屋が多かったため、四隅の神は庭で拝みました。しかし、現代のマンションなどではすべての場所を巡ることが難しいため、玄関口で扉に向かい拝む形に簡略化することもあります。
屋敷願いに必要なお供え物
屋敷願いには、神々へ感謝を伝えるために以下のようなお供え物を用意します。
【屋敷願いのお供え物】
◎ ヒヌカン(火の神)
- お酒 … 一対の徳利の中央に盃を置く
- お米 … 花米(※1)と中央に洗い米(※2)
- ウチャヌク … 三段重ねの白餅を3セット
- 果物 … りんご・みかん・バナナなど
- シルカビ(※3) … 1セット
- 線香(ヒラウコー) … 二枚半(日本線香12本+3本)
◎ お仏壇(地域による)
- お酒 … 徳利1本、盃に注いだお酒
- お米 … 花米
- ウチャヌク … 三段重ねの白餅を2セット
- 果物 … りんご・バナナ・みかんなど
- 線香(ヒラウコー) … 二枚(日本線香12本)
◎ その他の神々(四隅の神、門の神、トイレの神、中陣の神)
- お酒 … 一対の徳利と盃
- お米 … 花米と中央に洗い米
- ウチャヌク … 三段重ねの白餅を2セット
- 果物 … りんご・バナナ・みかん
- シルカビ … 1セット
※ (※1)花米 … 炊いていない生米。
※ (※2)洗い米 … 七回水ですすいだお米。法要時のみ供える地域もあり、その場合は「クバンチン」として三十五円を供える。
※ (※3)シルカビ … 神様へのお金を模した半紙。三枚重ねて四等分にしたものを一組とする。
屋敷願いの拝み方
神職の方々は伝統的な「グイス」と呼ばれる言葉を用いますが、家庭では自分の言葉で感謝と祈願を伝えても問題ありません。
- 「アリサーサー ウートゥートゥー、○○ガナシー(神様の名前)」と唱える
- お供え物の内容を伝える
- 日々の見守りに感謝を伝える
- 「ヤナカジ・シタナカジ(悪霊・悪疫)」を払い、良い運気(果報)が訪れるよう祈願する
- 「ウートゥートゥー」「ウートゥートゥーディービル」などで締めくくる
家長が中心となって拝み、家族は手を合わせるだけでも良いですが、地域によっては家族全員が線香を持つ場合もあります。その場合、一人あたり半分のヒラウコー(日本線香3本)を使用します。
まとめ
屋敷願いは、沖縄の家庭に伝わる大切な伝統行事であり、家族の健康と家の安全を願うものです。年に一度、または二度、旧暦の節目に合わせて行われることが多いですが、最も重要とされるのは旧暦12月24日です。
今では新暦の年末年始が一般的になりましたが、かつての沖縄では旧暦の年末年始が一年の大きな節目でした。この機会に、家と家族を見守る神々へ感謝を捧げる屋敷願いを行ってみてはいかがでしょうか。