沖縄の「フーフダ(沖縄の呪符)」とは?門と屋敷を守る六枚の護符をやさしく解説

沖縄の暮らしには、シーサーや石敢當(いしがんとう)だけでなく、家々を静かに守ってきた護符があります。それが「フーフダ(沖縄の呪符)」です。木や紙に呪句や神名が記された札で、家の“結界”を補強するために用いられてきました。

どこに、何枚貼るの?

フーフダの基本のセットは6枚。門口の左右に2枚、屋敷の四隅に4枚を配し、外からの“悪さ”が敷地に入り込まないようにする配置です。現在も神社や寺院で授与されることがあり、地域や宗派で書式や文言が少しずつ異なります。

何が書かれているの?

フーフダに記される内容は大きく二系統あります。

  • 門口に貼る札…盗難除けなどの主文とともに、「とほかみえみため」(吐普加美依身多女)と読む祈りのことばが添えられる例が知られています。もともと神前で唱えられた古い言葉で、「遠つ神、笑(え)み給え」等の趣旨に通じると解説されています(普天間権現の呪符)。この言葉は、宗派や神社によって、書かれている文言が違います。
  • 屋敷の四隅に貼る札…四方を守る四天王(持国天・増長天・広目天・多聞天)の名を配する型が各地で確認されています。

置き方・向きの考え方

門は人だけでなく「魔も出入りする場所」とされ、ジョウ(門)を抜ける流れに“正面対策”として2枚を、屋敷境の四隅に“囲いの防御”として4枚を配する――そんな発想で理解すると、配置の意味が腑に落ちます。家の中心(中柱)やヒヌカン(火の神)付近に貼る例も地域には残っています。

いつ頃から広まったの?

研究者の整理では、明治末~大正期にかけて現在みられる形式が沖縄で広まった、という見立てがあります。近代に神社・寺院が授与する護符として普及し、地域の実践の中で文字や配置が変奏されてきました。

沖縄の「家を守るもの」の中での位置づけ

沖縄の屋敷は、ヒンプン(目隠し壁)や石敢當、屋根のシーサー、シャコガイや“サン(サングァー)”など複数の魔除け・まじないが重層的に働く文化を持ちます。フーフダはそれらと並ぶ結界補強の札として門柱や四隅に静かに存在してきました。民俗調査でも、門脇や屋敷の四隅に立てる呪符として記録されています。

方言名とことば

「フーフダ」は、しまくとぅば(沖縄語)での呼び名で、語彙集では「護符」や「神符」として説明され、地域によってはフーフラと呼ぶところもあります。民具名としての定着がうかがえます。

現代の扱い方(やさしい作法)

  • 授与元を大切に:寺社から授かった札は粗末に扱わず、傷んだら授与所に相談を。
  • 貼る場所の意味を尊重:門は外から内への境、四隅は屋敷の境界。風雨に耐える位置に、景観と安全に配慮して設置を。
  • 他の家守りとの調和:シーサーや石敢當と競合させるのではなく、屋敷の“流れ”を整える意識で。

まとめ:六枚の札がつくる、沖縄らしい“見えない結界”

フーフダは、門口と屋敷の四隅を要所として外からの厄をはね返し、内を整えるための知恵です。札そのものは素朴でも、そこに込められたのは「境を意識して暮らす」沖縄の住文化。シーサーや石敢當と同じく、暮らしの地図に結界を描く実践だといえるでしょう。家の造りや周囲の環境、地域の作法に合わせつつ、静かな守りとして取り入れてみてください。


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